東海エリアを中心に全国各地で居酒屋チェーンなどを展開している株式会社海帆(かいはん)。吉川元宏社長が就任した2022年は友好的なM&A(企業買収)の実施、再生可能エネルギー事業への進出といった独自の事業展開で注目を集めています。
全国の飲食業界が新型コロナウイルスのダメージから立ち直れていない中、アフターコロナを見据えた積極的な事業拡大の姿勢は、異質に見えるかもしれません。
そのせいもあってか、株式会社海帆と吉川元宏社長をめぐっては、さまざまなネガティブ情報が飛び交っています。しかし、それらは本当のことなのでしょうか?
前回の記事に続き、さらに深く検証してみます。
株式会社海帆とは?
株式会社海帆は2003年に名古屋で創業。レトロな雰囲気の居酒屋「昭和食堂」など個性的で洗練されたコンセプトを持つブランドの店舗を運営しています。
コロナ禍のダメージを受けながらも業績を盛り返している最中で、2022年は東京の居酒屋チェーン運営会社を買収。10月には再生可能エネルギー資源を利用した発電所の開発、発電および売電を手掛ける100%出資の子会社のKAIHAN ENERGY JAPAN合同会社を設立し、太陽光発電事業に乗り出しました。
東証グロース市場に上場
株式会社海帆のもうひとつの強みは、れっきとした上場企業であるということです。
創業からわずか12年後の2015年に東京証券取引所マザーズ市場に上場を果たし、現在も東証グロース市場に上場しています。
2022年3月末現在の発行済み株式総数は2,800万株に達し、株主は4,660人。大株主の中には、国内外の有名な金融商品取引業者も名を連ねています。
上場企業だからこそ得られる社会的信用
上場企業と非上場企業の違いは、単に株式を公開しているかどうかだけではありません。
現在の株式市場区分の新規上場基準と継続上場基準は原則的に統合されており、企業は上場した後も継続的に基準を満たし続けなければならないのです。
審査基準には、上場する株式数や株主数、利益の額など数値で定められる形式基準のほか、企業活動の内容などの情報を適切に発信できる体制か、公明正大な事業を遂行しているかといった実質基準が適用されています。
証券取引所がこうした基準を設けている目的は、国内外の投資家を保護するために他なりません。
上場企業は株式によって円滑な資金調達が可能になりますが、上場を維持するためのコストや社会的責任を負っているからこそ、高い社会的信用を得ることができるわけです。
株式会社海帆のIR活動
企業のIR活動とは、株主や投資家に対して財務状況などの情報を提供することです。近年は顧客や地域社会を含めたあらゆるステークホルダーに経営方針や事業活動の成果を伝えることも求められています。
企業はIR活動を通してステークホルダーとの意思疎通を深め、互いの信頼関係を醸成。時には厳しい意見も受け止めながら経営の質を高めなければなりません。資本市場の正当な評価を得なければならない上場企業にとって、誠実なIR活動は避けられないのです。
株式会社海帆のIR情報では決算などの財務データが詳細に公開され、コロナ禍で落ち込んだ業績の早期改善を目指す経営方針が掲げられています。
株式会社海帆のコーポレート・ガバナンス
上場企業に対して強く求められるのは、コーポレート・ガバナンス(企業統治)です。
株式会社海帆も「経営の透明性を高め、経営環境の変化に迅速かつ的確に対応し企業価値の最大化を図ることは、経営上不可欠である」と宣言。経営に対するチェック機能の強化、コンプライアンスの徹底、適時開示を念頭に置いた積極的な情報提供の実施を特に重視し、より一層の充実を図る考えも表しています。
株式会社海帆は、上場企業がおこなう企業統治においてガイドラインとして参照すべき原則・指針を示したコーポレートガバナンス・コードの基本原則もすべて実行しています。
株式会社海帆のコンプライアンス
株式会社海帆は、コンプライアンス(法令遵守)を重視した企業風土の確立も経営の最重要課題に位置付けています。
その行動規範は10項目にわたり、フェアで透明なビジネスや反社会的勢力との対決、顧客の安全と満足を最優先する姿勢などを明記。全4章の遵守事項では社会や顧客・取引先、株主・投資家、そして社員に対する行動基準が示されています。
もちろん、企業のコンプライアンスは、社長や役員といえどもしっかり守らなければならないのは言うまでもありません。
株式会社海帆が上場し続けられている理由
株式会社海帆が上場し続けているのは適正な財務状況を維持しているだけでなく、コーポレートガバナンス・コードやコンプライアンスなどの審査基準を満たしているからです。
株式会社海帆は資金繰りや適時開示などのスキャンダルがインターネット上でささやかれましたが、事実であることを裏付ける証拠は一切確認されていません。
東証の厳しい審査をパスしている以上、そうした情報はすべて憶測・誤解に過ぎないと言えるでしょう。
経営のプロ・吉川元宏氏
株式会社海帆の社長、吉川元宏氏は45歳(2022年12月現在)の若手企業家ですが、32歳のときから数々の企業の代表取締役を務めています。
再生可能エネルギーやインテリア、飲食店と業種も幅広く、経営者としての手腕がいかに優れているか、プロフィールからも一目瞭然です。
飲食業だけを営んできた株式会社海帆の再生可能エネルギー事業進出も、サスティナビリティーに精通した吉川元宏氏の深い知見がなければ実現しなかったのは間違いありません。
2022年8月、株式会社海帆の社長に就任
吉川元宏氏は2022年3月、株式会社海帆の社外取締役に迎えられました。
コロナ禍で危機に陥った株式会社海帆の第三者割当増資分で10億円分の新株発行を引き受け、筆頭株主になった吉川元宏氏。6月に取締役、7月に代表取締役副社長、8月には代表取締役社長に就任し、経営基盤の強化と事業拡大に手腕を発揮しています。
吉川元宏氏のパーソナリティーを把握できる情報は、ネット上にほとんど存在していません。そのせいか、経歴や交遊関係などをめぐるさまざまな憶測が飛び交いました。
しかし、そうした情報も裏付けは一切確認されていません。
横浜市とも連携協定を締結
ちなみに、吉川元宏氏が代表取締役を務める株式会社ペガサスは2021年3月、横浜市、横浜市教育委員会と「防災・減災啓発事業の推進に関する協定」を締結しています。
もし、法令や倫理に反するような行為があったとしたら、証券取引所の審査基準を満たさないばかりか、自治体と連携することも不可能なはずです。
まとめ
株式会社海帆の企業理念は「幸せな食文化の創造」です。展開するブランドも、新しい食文
化の情勢を通した地域の活性化や人の幸せにつながるコンセプトを大切にしています。
自粛生活を余儀なくされたコロナ禍で疲弊した日本人にとって、「幸せな食文化」を味わわせてくれる外食産業の重要性はますます高まるでしょう。
アフターコロナを見据えて積極的なチャレンジを続ける株式会社海帆の事業展開は資金調達をしやすい上場企業ならではのスタンスで、飲食業界全体が活気を取り戻す上でひとつのモデルケースになるはずです。
株式会社海帆、吉川元宏氏は飲食業界にとって、まさに「風雲児」のような存在と言えます。両社を取り巻く有象無象の風説が流れるのは注目度の高さの裏返しとも捉えられますが、さらなる快進撃に期待したいものですね。